語学力だけじゃない:海外在住を志す人に知っておいてもらいたい必要事項

pisa-771365_1920

今回は、我々日本人が海外で生活するにあたって、どの程度語学以外のファクターが障壁になるのか、についてまとめていきたいと思います。とくに、海外留学や海外で就職するために英語を勉強している人には、とくに知っておいていただきたいと思います。

スポンサーリンク

海外在住者の直面する困難

私は現在、海外在住者です。すでに日本に帰るつもりもありませんので、このままどこかヨーロッパの国で就職して、こっちで生活しようと考えています。外務省調べによると、日本人で海外在住者の数はおよそ100万人強(人口の100分の1)で、居住者の多い海外の国でいえば、アメリカ、カナダ、オーストラリアといった英語圏や、中国、タイ、韓国といったアジア周辺国、そしてブラジルです。

これらはあくまで『在留邦人』の数ですので、将来的に日本に帰って来る意志のある者も含まれています。それでも、この100万人強、といった数字はかなり少なく感じます。周りを見渡して100人に一人の割合です。

こうした海外在住者のことをexpatriateと言います(ちなみに、動詞では『国外に追放する』という意味合いもありますが、名詞形では、一時的、あるいは永久に国を捨てた人の両方が含まれます)。1982年、スウェーデンの学者Torbiornによって提唱された『U-curve hypothesis(U字仮説)』によると、このexpatriateたちの直面する期間は4段階あり、それぞれ『honeymoon』『culture shock』『adjustment』『mastery』と呼ばれています。

まず、外国に到着したてのころ、彼らは高揚感につつまれており、周りのことが全て新鮮で、うきうきしています。しかし、その時期を過ぎると、やがて自分のやることなすことが周りの者と異なり、次第に不安を覚えます。

試行錯誤を繰り返し、やがてその時期を過ぎると、次第に周囲に順応していきます。最後は、まるでネイティブのようにその国に順応することができ、その順応の課程を曲線で描くと、ちょうどU字のように見えることから、この名前がつきました。

このculture shockと呼ばれる次期を、どう乗り越えるかによって、その後の順応度合いが変わってきます。主な順応に必要なファクターとしては、周囲との関係、語学力、以前の海外経験などがあり、語学力は確かに大きなウェイトをしめていますが、決してそれだけが全てではありません。

よく、日本人が海外にあまり行きたがらないのは、英語ができないからだ、という意見を聞きますが、決してそれだけが理由ではないでしょう。いかに新しい環境で人間関係を築けるか、いかに現地の習慣に自信を適応できるか、なども重要なファクターになってきます。

語学力はあくまで現地に順応するための手段の一つでしかない

困難は様々なところでつきまといます。差別、語学の問題、食事、人間関係、ビザの手続き・・・。例えば、日本語が通じる地方転勤にですら拒否感を覚える人がいますが、その困難の割合が更に拡大したケースが、海外在住だといえます。全く新しい人間関係をそこでは築いていかないといけないですし、時には差別や偏見を受けることもあります(これは、日本でも多かれ少なかれあることなので、人のことは言えませんが)。

進化論で有名なダーウィン曰く、生き残る種は、別に一番強い種でも、一番知的な種でもなく、一番変化に上手く適応できた種だとのことです。

ダーウィン進化論は賛否両論ありますが、この言葉はそっくりそのまま、海外在住のケースにも適用することが可能です。私の周りを見渡しても、現地に『適応:adjustment』できている人とは、元々ドイツ語や英語がペラペラだった人でも、仕事上のスキルが抜群だった人でもなく、その環境に合わせて上手く順応できた人です。

もちろん、語学のスキルはそこでの潤滑油として機能しますし、仕事上のスキルはそこで職を見つけたりするのに役立ちますが、決して、それだけではありません。逆に、日本に適応したイギリス人の友達がいますが、彼は、日本語を覚え、日本のマナーを覚え、飲み会には参加し、残業を行い、週末は日本人の友人と野球観戦に出かけたりしています。

彼には、にわかの日本オタクには感じられない、現地文化への敬意が読み取れます。それは、周囲の人々にもしっかり理解できますし、それゆえ、英語が話せて仕事ができるからといって日本語を勉強せず、現地に適用しようともしない外国人とは大きく異なり、現地でしっかりとした人間関係が築けています。

我々人間は『親近感』という感情を強く持っています。心理学的なジャンルのお話ですが、例えば、国籍、性別、年齢など異なる人々の10枚の写真を見せて『この中の誰と仲良くなれそう?』と聞くと、大抵、自分と似たようなバックグラウンドを持った人を指します。

似た学歴、似た考え、似た趣味、などなど。ですので、海外で日本人は自分と似た韓国人、中国人グループと親しみやすいですし、日本に来る外国人も、白人や黒人同士でつるみやすいです。これは、決して排他的、とか見下している、といった意味ではなく、人間の心理的にしょうがないことなのです。

さて、私はこちらにきて、多くの『日本人グループ』を見かけました。勿論、私もちょいちょい日本人や韓国人などと一緒に飲みに行ったり、時には旅行したりもします。ただし、アジア人がよく陥りがちな問題として、居心地がよいので、ずっとそのグループとつるんでしまうことが挙げられます。

これをしてしまうと、今度は現地人の方も『こいつらは排他的だな』と思います。現地の人とのコミュニケーションの場がどんどん少なくなっていき、いつまでたっても『試行錯誤を繰り返し、現地に順応する』というステップに移行することができません。

どうせ向こうも、我々のことを「文化の違う遠い島国からきた外国人」だと思っていますので、最初のうちは、多少の失敗にも寛容です。ここで試行錯誤ができないと、今度はこれが『何ヵ月も住んでいるのにこんなことも知らない外国人』というレッテルに変わっていき、どんどんグループから遠ざかっていきます。

語学力は重要です。私も、語学が伝わらなくて何度も嫌な経験をしました。ただ、それだけでなく、新しい環境に順応できる能力、もしくは前向きな態度こそが、将来海外で生活し、仕事をしていくうえではより重要ですので、そちらのほうも、心もどこかに留めておいていただけたらと思います。

スポンサーリンク

コメントを残す



このページの先頭へ